ドゥテルテ大統領

2020年9月22日、フィリピンのドゥテルテ大統領が国連総会での演説を行いました。新型コロナウイルス対策の中で、今年はニューヨークには行かずオンラインでの参加となりました。

国連での一般演説は、2016年に大統領に就任以来初めてのことです。報道では自分で原稿を作った言われており、全て英語で非常に素晴らしい演説でした。

ドゥテルテ大統領の国連総会でのスピーチ全文を、日本語訳してご紹介したいと思います。

▶︎実際の演説の動画はこちら(英語)

2020年9月22日ドゥテルテ大統領国連総会演説の全文

本日フィリピンの人々を代表して、国連創立75周年の記念に皆様にご挨拶することを光栄に思います。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)という目に見えない敵は、見慣れない世界の景色をもたらし、前例のない危機を世界中にもたらしました。それは第二次世界大戦以来、世界と国連が直面した最大の試練です。

国連は世界中の多くの国と人々に救済と希望をもたらしましたが、今は多くの命を奪い経済と社会秩序を破壊したウイルスに悩まされています。

今私たちは岐路に立たされています。COVID-19にどのように対処するか、これは私たちの未来を決定づけることでしょう。

国連加盟国のみならず、フィリピンも同様です。

私たちは、国連が75年前に構想したビジョンとミッションについて、厳しくも根本的な問いを投げかける必要があるでしょう。

また、国際連合の原則と理想に忠実であり続けてきたかどうかを、自問自答する必要もあるでしょう。

議長。現在の現実に照らして、フィリピンはこの恐ろしいウイルスで愛する人を失った世界中のご家族とともに悲しんでいます。

心から哀悼の意を表します。

私たちは、国内外で命をかけて戦った最前線の人々に敬意を表します。また、COVID-19の病原性と未知の特性にもかかわらず、COVID-19のパンデミックと闘っている医療専門家に敬意を表します。

それぞれの国がパンデミックと戦うための独自の戦略を持っていますが、世界が必要としているのは、共通の目的を追求するための国際的な計画と努力です。

COVID-19には国境がありません。国籍も、人種も、性別も、年齢も、そして信仰もありません。

フィリピンは、パンデミックとの闘いにおいて国連が果たす役割を高く評価しています。パンデミックによって経済的成長が損なわれた中所得国として、私たちは国連のCOVID-19対策・回復基金の立ち上げを歓迎します。

COVID-19に対しての技術と製品への普遍的にアクセスできるようにすることは、世界的なこのパンデミックからの回復において極めて重要です。

世界は、安全中で効果的なワクチンを見つけるために競い合っています。

世界がそのワクチンを見つけた時、そのワクチンへのアクセスを拒否したり、妨げることはあってはなりません。豊かな国も貧しい国もワクチンを利用できるようにしなければなりません。

フィリピンは、ASEANや非同盟運動のパートナーと共に、COVID-19ワクチンは世界的な公共財であるべきと主張しています。私たちはこのことを明確にします。

私たちは、世界保健機関(WHO)のための十分な資源と政策スペースを持つグローバルな保健アジェンダを求めています。

そして、迅速に調整し、迅速に対応するWHOを必要としています。フィリピンは、グローバルな資源の仕組みの中でその役割を果たします。私たちの医療従事者は最高の人材です。

議長。パンデミックのために安定と信頼を必要としていたのと同じように、地政学的緊張は増し続けています。

緊張のエスカレートは誰の利益にもなりません。新たな一触即発は恐怖を高め、人々を離れさせる傾向があります。

象が戦うとき、踏みつけられるのは草である。

争っている国の規模と軍事力を考えると、言葉の戦争が核兵器とミサイルの実戦にまで悪化した場合、人命と財産に恐ろしい被害が及ぶことを想像し、愕然とすることしかできません。

故に、南シナ海、朝鮮半島、中東、アフリカの人々に呼びかけます。もしまだ有効的になれないのであれば、神の名においてお互いを憎みすぎないようにしましょう。私はかつてこの言葉を聞きましたが、完全に同じ意見です。

議長。フィリピンの出稼ぎ労働者は、パンデミックによって壊滅的な被害を受けています。多くの人が生計だけでなく、健康や生活も失っています。しかし、彼らは世界のさまざまな地域で、治療やケアをしながら、最前線で活動しています。

フィリピン政府は、前例のない本国送還プログラムを行いました。34万5千人以上の海外のフィリピン人労働者が帰国を必要としていたのです。

その半数の人はすでに帰国を果たしを持ち帰り、また半数の帰国も現在進めています。

私たちは、このパンデミックで海外のフィリピン人に居住許可証、検査、治療、また衛生環境を提供してくれた国々に感謝します。

また、COVID-19の規制のために立ち往生していた船員の大半を連れ戻しました。IMO(国際海事機関)と共同で、船員の安全な交替のためのグリーンレーン(優先レーン)を率先して作りました。

このような時には、移民のステータスに関係なく権利を促進し保護するために、より強力な協力が必要です。

私たちはすべて、安全で秩序のある継続したた移民のための「グローバル・コンパクト(2016年国連で承認された移住のための国際合意)」を遵守しなければならなりません。各国がこのパンデミックへの対応にすべての移民を含めない限り、事務総長が述べたように「すべての人が安全になるまでは、私たちの中の誰も安全ではありません」です。

貧困率は、16.6%に悪化しました。2010年から2019年の間に6.4%の持続的な経済成長率を達成したことで、フィリピンは2020年末までに高中所得国になる軌道に乗っていました。しかし、パンデミックの影響で経済は不況に陥っています。

このような成長への悪影響にもかかわらず、フィリピンは持続可能な開発目標への取り組みを続けています。

議長。COVID-19に対抗するために必要なのと同じ緊急性が、気候危機に対処するためにも必要です。これは、世界中で抱える現在の不平等と脆弱性をさらに悪化させる地球規模の課題です。

気候変動は、パンデミックにさらに大きな損害を与え悪化させています。

フィリピンのような発展途上国の人々が最も苦しんでいます。私たちには、これ以上苦しむ余裕はありません。

フィリピンは、気候変動と戦うためにパリ協定に参加しました。私たちは、すべての締約国、特に気候変動との課題に取り組む協定を履行していない締約国に対し協定を尊重するよう求めます。

私たちは、すべての締約国に準備と回復のためにこのコミュニティと人々を強化することを求めます。私たちは、人類と地球、私たちの共通の故郷について話しています。

議長。フィリピンは、特に違法薬物、犯罪、テロリズムの惨劇から国民の人権を守り続けます。

多くの利権団体が人権を武器としてきました。意味のあるものもあれば、そうでもない悪意的なものもあります。

彼らは民主主義の国の機能する制度やメカニズム、そして最後の2年間にもかかわらず変わらず広く支持されている国民に選ばれた政府の信用を失墜させようとしています。

彼らは人権擁護者を装い、最も弱い立場にある人間を食い物にしています。人権擁護者として自分自身を偽り、子供を兵士や人間の盾として使うことさえあります。学校でさえです。

彼らは人権という毛布の下に悪行を隠していますが、そこには血がにじみ出ています。

前進するためには、国連との開かれた対話と建設的な関与が鍵となります。

しかし、これらは完全な客観性、非干渉、非選択性、真の対話の原則をを尊重して行われなければならなりません。人権に関する生産的な国際協力の基本的な基盤となるものです。

議長。テロリズムは大きな脅威です。

私がアカバ・プロセスで述べたように、フィリピンはあらゆる手段を講じ、あらゆる形でのテロリズムから罪のない人々を守りたいと心から願う人々と協力していきます。

外国人テロリストが参加したマラウィの戦いから、効果的な法的枠組みが極めて重要であることを学びました。私たちの2020年テロ対策法は、テロとそれに対する通常の大胆な対応の両方に焦点を当てることで、法的枠組みを強化するものです。

この法案の制定は、関連する安全保障理事会決議と国連の世界テロ対策への戦略への私たちのコミットメントと厳格な遵守に基づいて行われました。

最も重要なことは、私たちは被災したコミュニティを再建し、我が国におけるテロリズムと暴力的過激主義の根本原因に対処することに引き続き取り組むということであります。

私たちは、国際連合憲章への義務と関与、そして1982年の「国際紛争の平和的解決に関するマニラ宣言」によって重要視されたように、心に留めておかなければならなりません。

フィリピンは、UNCLOS(海洋法に関する国際連合条約)と2016年の仲裁に従って、南シナ海におけるそのコミットメントを強く主張します。

仲裁は現在国際法の一部であり、妥協を超え、また政府が希薄、減少、放棄することのできる範囲を超えているものです。

私たちは、それを弱体化させようとする試みを断固として拒否します。

この仲裁を支持する国の数が増えていること、そしてこの仲裁が象徴するもの、すなわち無謀を凌駕する理性の勝利、無秩序を凌駕する法の勝利、野心を凌駕する円満の勝利を歓迎します。これこそが、法の威厳なのです。

議長。世界的な健康危機は、世界の安全保障環境をさらに複雑にしています。しかし、いかなる野心も無差別に完全に破壊する兵器の使用を正当化することはできません。

核戦争が引き起こす可能性のある死や、大量破壊を引き起こす可能性のある化学兵器や生物兵器の無謀な使用を許すことはできません。

これらの死の兵器は、私たち全員を死の危険にさらすものであり、特にテロリストの手に落ちた場合には、その魂に人間性のカケラもない状態になってしまいます。

私たちは、すべての加盟国に対し核不拡散条約、化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約を完全に履行することを求めます。

私はフィリピン上院に核兵器禁止条約の批准を求めました。重要なことは、私たちが最初に署名した国の一つであるということです。

議長。フィリピンには、1917年の革命後の白人ロシア人、第二次世界大戦中のヨーロッパ系ユダヤ人、1960年代後半のベトナム人、1979年の革命で自国を離れることを余儀なくされたイラン人など、長い間難民に門戸を開いてきた歴史があります。

フィリピンは、1951年の難民の地位に関する条約、および1967年の議定書の下での義務に従い、この人道的伝統を尊重し続けています。

しかし忘れてはならないのは、最も弱い立場にある人々、つまり紛争、迫害、政治的な不安定によって避難している人々を支援することは、すべての国の共通の責任であるということです。

何度も申し上げているように、フィリピンの扉はこれまでと同様、ロヒンギャのように安全を求めて逃げているすべての人に開かれています。

世界的に難民危機が深刻化している中、人々が故郷を追われるような紛争や状況を終わらせるために、私たちは協力していきましょう。

議長。私たちの社会が多様化し、相互依存関係が強まるにつれ、社会的な結束力の問題が顕在化しています。

異なる信仰や文化を持つ人々の間で、常に相互理解と相互寛容を伴うことが、自分自身と他のすべての人々との平和な社会の唯一の基盤となります。

最後に、最も困難な状況の中で平和の大義を推進する、勇敢な平和維持隊員に感謝の意を表します。

フィリピンの平和維持要員は、中東のゴラン高原から西アフリカのリベリアまで脆弱な人々と危害を加えようとする人々の間の最前線に身を置いています。

女性の参加を増やすことで、国連平和維持活動におけるフィリピンの活動をさらに増やすことにも取り組んでいます。

再度、議長。COVID-19パンデミックやその他の課題を克服するためには、完全な相互信頼と、共に勝つか負けるかの信念を必要とするシームレスな結束で働かなければなりません。

死者を蘇らせることはできませんが、生きている者を救うことはできます。そして、より良く、より健康的で、より豊かで公正な社会を取り戻すことができます。

この目的のために、私たちは多国間主義に身を置きます。国連は、人類にとって不可欠な組織であることに変わりはありません。しかし、国連は私たちがそうするときに効果を発揮するのです。

大きな変化をもたらすためには、私たちは大胆な行動をとる必要があります。75年前にやっと国連を現実のものとしたのと同様の勇気が必要です。

安全保障理事会の構成と作業方法を改善し、総会の役割を強化し、国連のプロセスと運営を合理化するという長年の提言を実行する必要があります。

本当に、新しいグローバル・ノーマルに備えるためには、国連も今まで通りではいけません。

今日と明日の課題に対応するために、国連に力を与え、国連を改革しようではありませんか。

平和と安全を維持し、正義と人権を守り、すべての人のために自由と社会的進歩を促進するという使命を十分に果たすことができるよう、国連を強化しようではありませんか。

何といっても、私たちは国際連合なのです。ありがとうございました。

(※一部、意訳を含みます)

▶︎【ドゥテルテ大統領とは】生い立ち〜フィリピン第16代大統領

おすすめの記事